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TILは東京都内の自立生活センターの支援および一般社会に向けた活動、研究・政策提言をします。

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■ イベント報告     EVENET REPORT

尊厳死学習会 ~生きる時から死ぬまで障害者でいけないの!?~

目的


 最近、尊厳死法制化の動きがあります。死期が近い患者が自らの意思で延命措置を望まず、自然な最期を迎えるための「尊厳死」と主張しています。これについては歓迎の声がある一方、「命の切り捨てにつながりかねない」と危惧の声もあります。
「尊厳死」をめぐる議論について、類似の議論である「出生前診断」及び原発地域での子供を産めないという女性の声などをめぐる問題と一緒に取り上げ、私たちがこれから「しょうがい」「いのち」についてどう向き合って行くべきかを一緒に考えていきたいと思います。

<日時:>  2013年6月10日(月) 13:30~16:30
<場所:>  全国障害者福祉センター戸山サンライズ(第2、3会議室)
<参加人数>  83名

【第1部】~パネラーからの報告

パネラーの皆さんの写真です。 大塚さん川口さんの写真です。
尊厳死法制化の問題について
         ~人工呼吸器をつけた子の親の会〈バクバクの会〉大塚孝司


 現在、超党派の国会議員でつくる尊厳死法制化を考える議員連盟から「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」として、「延命措置の不開始」を趣旨とする第1案と「延命措置の中止等」を趣旨とする第2案が公表(2012年6月)されている。しかし、この法案には様々な問題点があるので以下に整理する。

①患者の意思の尊重・自己決定(第一・二条)
 死ぬために患者の意思を十分に尊重するというが、本人意思の尊重、自己決定といっても、家族の介護負担や経済的負担を気にすれば「自分は生きたい」と本音では言えず、亡くなっていく人がはるかに大勢いる。障害者や難病者など「生きること」さえ保障されていないのに、死に方の保障など本末転倒である。
②「終末期」の定義(第五条)および判定(第一・六条)
 「死期が間近」「あと数時間」といった「臨終期」があることや、どんな人であっても死期が訪れることは否定しない。しかし、医師から「終末期」と宣告されてもしばしば外れ、生き続けている人がたくさん存在しており「終末期」を判断することなど不可能である。 終末期を判定するため、必要な知識及び経験を有する二人以上の医師(主治医を含む)が判断するというが、前述のように終末期など誰にも判断はできない。
③医師の免責(第一・九条)  
 法制化は本人や家族のためというよりも、ガイドラインに則り「死」に向かっての手続き作業を機械的に行えることになり、医療者が悩まなくて済むことと、責任を問われないようにするためのものである。
④書面その他の方法での意思表示(第七・八条)  
 意思表示ができなくなった時の意思が、書面にした時の意思と同じか否かは確認できない。撤回したくても意思表示ができなくなっていたら撤回できず、死んでいくことになる。また、本人意思が書面としてあった場合でも、最終的には本人ではなく、家族が判断し決定することになり、悩むことには変わりはない。
⑤啓発及び知識の普及(第三・十一条)  
 重症な事故や重体になった時に「自分の命を助けなくて良い」と運転免許証や健康保険証に記載せよということか。医療費の削減に協力するため早々に諦め、費用を掛けずに逝ってもらおうということなのか。
⑥法案の拡大(第十二条・附則)  
 法案の附則で、施行後3年を目途とし社会環境の変化等を勘案して見直しが認められている。これは、「脳死・臓器移植法改定」の時と全く同じで、都合の良いように拡大解釈されて行く恐れがある。
⑦見えない圧力(第十三条)  
 人工呼吸器や経管栄養を使用することから「生きること」が始まる人はたくさんいる。しかし、法制化されると、社会からは「あーまでして生きたくはない」「生きている価値があるのか」といった無言の圧力を今以上に感じることになる
(季刊『福祉労働』135号 2012年6月25日)「『尊厳死法』、そんなものいらない(大塚孝司)」より一部を抜粋し加筆修正の予約版

【まとめ】
「死にたい人のため」の法整備、「死なせるための」法整備及び、「生きるに値する者」や「生きるに値しない者」の選別ではなく、どんな状態の人でも生きられる社会そして、「存在の価値」、「ただ生きている事の価値」を考える社会を目指したい。
http://www.youtube.com/watch?v=FxEuxwMrc8s より全内容が見られます。


尊厳死協会の「尊厳死宣言書(Living Will)」と「尊厳死法制化に反対する会」の考える案の比較 川口有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)
 尊厳死の宣言書(リビングウィル Living Will)  意思疎通が難しくなった私の尊厳のための宣言書
 私は、私の傷病が不治であり、且つ死が迫っている場合に備えて、私の家族、縁 者ならびに私の医療に携わっている方々に次の要望を宣言いたします。 この宣言書は、私の精神が健全な状態にある時に書いたものであります。 従って私の精神が健全な状態にある時に私自身が破棄するか、又は撤回する旨の文書を作成しない限り有効であります。 (1)私の傷病が、現在の医学では不治の状態であり、既に死期が迫っていると診断された場合には徒に死期を引き延ばすための延命措置は一切おことわりいたします。 (2)但しこの場合、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施して下さい。そのため、たとえば麻薬などの副作用で死ぬ時期が早まったとしても、一向にかまいません。 (3)私が数カ月以上に渉って、いわゆる植物状態に陥った時は、一切の生命維持措置をとりやめて下さい。 以上、私の宣言による要望を忠実に果たしてくださった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従って下さった行為一切の責任は私自身にあることを附記いたします。  私は、私の疾患や障害が進行し、意思疎通が難しくなった場合に備えて、私の家族、縁者ならびに私の医療に携わっている方々に次の要望を宣言いたします。 この宣言書は、私の精神が健全な状態にある時に書いたものでありますが、 私の精神や肉体がいまと同じ状態にない時でも、私自身が破棄するか、口頭で撤回したことは有効であります。 (1)私の傷病が、現在の医学では不治の状態であり、既に死期が迫っていると診断された場合であっても、私のいのちと私の尊厳のために、必要かつ十分な医療と介護を受けることを希望します。 (2)但しこの場合、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施して下さい。そのために必要なら、人工呼吸器や経管栄養などの処置をおこない、これらの医療の継続と私の尊厳のために必要かつ十分な介護を保障してください。 (3)私が数カ月以上に渉って、意識が混濁する状態に陥ったとしても、一切の生命維持措置をとりやめず、回復の可能性を探り続けてください。 (4)たとえ私が自由に医師を伝えることが難しくなっても、私の意思を尊重してください。そのために、最新の意思伝達措置屋文字盤、口の読み取りなどのあらゆる手段を駆使して、私の意思を読み取る努力を続けてください。 (5)上記の最終的な判断に関する一切を私の代理人として○○に託します。 以上、私の宣言による要望を忠実に果たしてくださった方々に深く感謝申し上げるとともに、その方々が私の要望に従って下さった行為一切の責任は私自身にあることを附記いたします
http://www.youtube.com/watch?v=paZMu82LRwE より全内容が見られます。

柘植さん、堤さんの写真です。

出生前診断の現状と課題 ~女性の選択をとりまくものについて考える 柘植あづみ(明治学院大学)

 出生前診断で異常を指摘され中絶に至るケースが増えている。日本産婦人科医会と横浜市大国際先天異常モニタリングセンターが300の医療機関への調査を基に推計したところ、05~09年の5年間で約6000件 に上り、85~89年から6倍になった。  (毎日新聞 2012年3月27日)
*出生前検査・診断とは ・胎児の段階で疾患や障害の一部を知る検査
 ・超音波検査では、胎児の発達状態だけではなく、外表や内臓の形成異常を検査できる。
 ・羊水検査では、胎児の染色体異常や一部の遺伝病や代謝障害などがわかる。
 ・母体血清マーカースクリーニング検査では、一部の染色体異常や二分脊椎などの確率が計算できる。
  ⇒検査を受けるか受けないか、診断の後にどうするかは、医師が決めるのではなく、
   妊婦とその夫が話し合って決めるべきだと考えられている。
 1966 兵庫県「不幸な子どもが生まれない施策」開始
 1973 優生保護法の改定の動き人工妊娠中絶を認める事由のうち「経済条項」の削除と
    「胎児条項」の追加の要求への反対運動。国会での法案審議未了⇒廃案
 1974 「不幸な子どもが生まれない対策室」に対する障害者団体からの批判を受けて、
     対策室の閉鎖、名称変更
 1996 優生保護法から母体保護法への名称変更
 1998 母体血清マーカー検査の実施に関する厚生省の見解の通知
 *日本の出生前検査の実施件数(推計)
 ・超音波検査(産科):調査、統計なし。前回の「妊娠と出生前検査の経験」調査では都内では99%
 ・羊水検査:2011年に1万6千件(推計)。アメリカでは、1989年には生児出産数の3.9% が受検、2003年には1.7%に減少(超音波と母体血清マーカー検査のため)、日本では1.6%と推計

【まとめ1】
・医師から出生前検査について説明することが、検査を勧められていると受け取られたリ、逆に説明しない行為が検査は必要ないと受け取られることが少なくない。
・羊水検査などを受けない理由には、検査をすることに批判的な意見や、検査の危険性によるだけではなく、自分には障害児は生まれないという楽観的な希望、検査を受けて厳しい選択を迫られる状況を避けたい、医師が勧めなかったなども含まれる。
【まとめ2】
・夫または自分の母による励ましで検査を受けないという意思決定、その逆もあった
・妻だけではなく、夫の「うちに障害児が生まれるわけがない」という意識
・女性の職業継続のために妊娠を中断することには周囲の理解を得るのが難しい。逆に、胎児に障害が あることは妊娠を継続しない理由として認められやすい、と認識されている。
【まとめ3】
女性の「自己決定」、「選択」とすることで、責任を女性に帰して、自分たちの責任転嫁をしている人たちがいるのではないか。医師、医療検査会社、夫、それに社会も・・・

*当日資料には、「新型出生前検査が可視化する日本社会の問題」雑誌『世界』岩波書店、2013年1月号(柘植さんの論文)も配布されている。 http://www.youtube.com/watch?v=3ow_9BNR5s4 より全内容が見られます。

原発と障害者の問題について 堤 愛子(町田ヒューマンネットワーク理事長)

1.反原発、脱原発運動に見え隠れする「障害児が生まれるから原発に反対」
  24年前の「まだ間に合うのなら」とスライド「みえないばくだん」の類似性     
  「障害を持つこと」の恐怖心をあおる     
  ※福島に住む人たちからも反発が…
2.「私たちは子どもを産めますか?」福島の高校生が問いかけるもの    
  「妊娠・出産の可否」ではなく「障害児が生まれるリスク」への不安    
  「差別意識がない」からこその危うさ    
  被ばくがなくても障害児は生まれる
3.障害者運動がめざしたもの…「医学モデル」から「社会モデル」へ     
  ありのままの自分が好き     
  社会が変われば、「障害」は障害ではなくなる。
4.「喪失体験」はつらいけど…でも「やっぱり引っかかる!」    
  「障害は個性」と思える人とそうでない人    
  先天性障害と中途障害    
  先天性障害者の二次障害…「やっぱりつらい」
  「個」としての障害をもつことと、社会総体としての「障害者はイヤ」は違う!
5.優生思想と性の管理は表裏一体     
  「五体満足な子どもを産む」ことへのプレッシャー     
  「女性」よりも「母体」が優先? 生命の選別と性の管理     
  「福島の女性」への新たな差別が…
6.本当に怖いのはなに? ありのままの生命と健康が脅かされること      
  元々障害児として生まれる予定だった子が健常児として生まれるとしたら…    
  →意外と恐怖の対象としては語られない     
  「障害」を持っていても「健康」だ!     
  「障害」を「恐怖の象徴」にしないで!!

http://www.youtube.com/watch?v=JOQGhtJXKMQ より全内容が見られます。

【第2部】~ パネルディスカッション 

会場の様子です。 投影中の様子です。



テーマ:「自己決定」と「尊厳」をキーワードに尊厳死を考えた。

 (Q&A/パネルディスカッション抜粋)

Q:日本ではALSの人の3割が呼吸器をつけていると川口さんが報告したが、それは、世界的に高い数値なのか?
A:日本では、90年代に入って人工呼吸器が医療保険でレンタルできるようになった。それまで呼吸器 を付けての在宅は絶対に難しかった。海外では、医療費の費用対効果といってALSなどの治らない 病気に対しては呼吸器を付けない方向である。      

Q:尊厳死、延命治療、出生前診断は個人個人が決められる社会を作ればいいと思うが、それは今の日本 の社会は大変難しいと思う。それについての意見と、関連して放射能の話は、日本人がどのような社 会を目指していくかによって、これからも原発が必要かどうかを考えていく必要があると思うが、パネラーの方はどう思うか?
A1:私も自分の子は障害がない子がいいなと思ってしまう自分がここにいるのは確かである。しかし、    一方で、自分の子供を育ててきた経験のおかけでここにいる。結果的にどっちが良い悪いではな くて、ありのままに生きる事が可能な社会を作っていく事が一番大切ではないかと今は感じてい る。
A2:障害や障害児、障害者を抱える家族が安心して暮らせるというのが確立していれば障害なんてなん    でもない。私たち少数派で、ここに集まっている人達は1%とかの集団であるが、この考え方以外 は、逃げ道がないからどうにかしてみんなに伝えていかないといけない。
A3:日本では、4月から新しい出生前検査が医療機関で始まっている。検査費は約20万円だが、かな    りの希望者がいてそして検査を受けた人がいる。その検査を受ける理由としては、障害、病気がある子を育てていく際に、どのような社会資源があって、サポートがあって、どんな楽しみがあってというのが見えないから、つまり不安であることが考えられる。

Q:制度の事も絡んでくると思ので、障害者権利条約に批准するためには、産科医療補償制度は廃止されなければならないと思いますがこれはどう思うか?
A:産科医療補償制度というのは、生まれる時の酸素不足などで脳性麻痺になる子が一番対象としてイメージされている保障制度。その時に出産した側から産科医に賠償請求すると医療事故として産科医が補償しないといけない制度。いわゆる裁判が生じ、裁判の結果、新生児の時の障害は一億円規模に補償がなるという事例があり、その為にお産を担当している産婦人科医は保険に入っている。
Q:対象は拡大されるのか?
A:色々議論されているが、まだ議論中である。

Q:海外では、「患者の権利」として尊厳死、安楽死、出生前診断と中絶が要望されているとの事。弁護士会などが準備している日本での「患者の権利法」ではそれらの事はどのように位置付けられているのかご存知でしたらお教え下さい。
A1:北欧といってもみんな全然違っていて、スウェーデンの方が言うには、インフォームドコンセプトに呼吸器が入っていない、呼吸器は最初からしない。重い人は生まれないように合意が取れている。
A2:アメリカやヨーロッパでは、妊婦さんに出生前検査があるということは伝えないといけない義務がある。その情報自体を情報として提供して断るのは自由。最近アメリカでは、検査はほとんどが受ける傾向である。 イギリスやフランスは出生前検診が法的モデルの対象になっている。アメリカの場合に、基本的には民間保険なので公的な保険ではないですが、貧困層と言われる貧しい人たちの医療保険には出生前検査が項目に入っている。 北欧の場合はダウン症の出生数が減ってきているそう。具体的には北欧では出生前検査が普及している北欧に行ったことはないが、アメリカも減ってきているという統計はないが、実際に検査を受ける人は多い。


以上、報告いたします。

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